おかずがない時代を支えた麦飯 〜血糖値を測ります②〜
- 2015/09/23(Wed)
前回の「測定値の見方 〜血糖値を測ります①〜」に追記ですが、
血糖値の目標上限には160mg/dlまではOKという声もあります。

(画像引用元:日常生活での血糖値測定 ~食後高血糖を抑える健康法 No.5)
個人差はあるようですが、体内の血糖値が170mg/dlを超えると尿から糖を排出するようです。
それはつまり、体がこれ以上の糖は無理です!と言っているでしょう。
僕が血液検査でお世話になっているクリニックの院長先生は
分子栄養学に理解のある糖尿病専門医ですが、
「160mg/dlくらいまでは大丈夫ですよ」という考えです。
まあ血糖値はあまり上昇しない方が良いとは思いますが、
160mg/dlまではその後速やかに下降する分にはOKではないか、と考えても良さそうです。
さて今日のお題は「麦飯」です。
日本人は米食で育ってきたと思っている人が多いですけど、
金持ち以外はそんなに米を食べていなかったのではないでしょうか?

これ、日本人が縄文から現代に至るまで何を食べてきたか検証している本です。
稲作が中国から朝鮮半島を経由して日本に伝わり、
ジャポニカ米を縄文時代から今に渡るまでずっと日本人は食べています。

(画像引用元:縄文イネの品種と起源は)
縄文時代に栽培されていたのは、インディカ米とジャポニカ米の中間的な
熱帯ジャポニカだったとも言われていますけどね。
(これが何故重要かは、インディカ米のGI値を調べてみれば分かります。)
弥生時代に水田稲作が爆発的に広がり、日本に米文化が形成されていきます。
しかし米は富の象徴であり、租税として扱われてきた面が強く、
決して庶民がたくさん食べるものではありませんでした。
「日本人が何を食べてきたか」には、
古墳〜飛鳥、奈良時代にかけて
米の他に粟、稗、麦、黍、大豆、小豆、大角豆
などが食されてきたと記述されています。
645年に日本で初の肉食禁止令が出されますが、
これは4月〜9月の期間限定、
そして牛、馬、犬、サル、鶏という5つの動物の肉にだけ限られたものでした。
これが何故かと言えば、「稲作推進のための措置」なんですね。
律令国家は経済的基盤として生産性と備蓄性にすぐれた米を選択し、
不安定な生産活動による肉を犠牲にした。
その第一歩です。
以来ずっと農民は米を作らされては、国家に取り上げられている訳です。
江戸時代、慶安の御触書にはこう書き記されています。
「百姓は雑穀による食事をふだんの事とするため、
麦、粟、稗、菜、大根などをつくってなるべく米を食べないように心がける」
むやみ勝手に米を食べてはいけないと定められていました。
米をたくさん食べていたのは、主に貴族階級や武士です。
脚気という病気がありますよね。
ビタミンB1(糖を代謝するビタミン)が欠乏する事によって起こります。
かつて結核とならぶ二大国民病として多くの死者を出しました。
戦時中、海軍では「洋食(タンパク質多め)+麦飯」を採用して脚気罹患率を激減させた歴史があります。
これに対し「日本食(副菜軽視)+白米」を選択した陸軍は脚気による大量の死亡者を出します。
ちなみに、江戸時代に脚気を発生させていたのは将軍や上層の武士達が多かったのです。
この過去を振り返ってみたら、
白米100%で食べる事がそもそもの間違いじゃないのか?
と思いませんか?

この木の枝でラーメンを美味しそうに食べるおじさんは、
先日お世話になってきた山のハム工房ゴーバルの立ち上げ人、桝本進さんです。
(ゴーバルの事はフェイスブックに投稿したので宜しければご覧ください。)
山形県出身の60代。
「ぼくは麦飯が嫌いで、おかず食いだったんだけどね…。
ていっても、食べるおかずは無かった訳だけど(笑)
ひたひたに醤油を入れた1パック分の納豆を
10人くらいで分けたりしてたんだよ。」
と言う桝本さん。
どれくらいの割合の麦飯だったんですか?と聞いてみれば、
「全部押し麦の事も多かったよね…。
麦飯の香りが本当に嫌いだったなぁ。
っていっても、米に対する憧れのせいでそう思ったのかもしれないけどね。
たまに大工みたいな仕事を親戚から承ってたんだけど、
その報酬は白い米のごはんだったよね。」
おお……江戸時代、大変な城の大工事に「コメの飯が食える」の魅力に
人が集まっていたのと一緒じゃないですか!
米は富の象徴…庶民の日常食にあらず。
おかずが無かった時代を支えてきた麦飯。
いまはおかずも食べられるんだから、きっと問題ないでしょう。
ということで前振りが相当長くなりましが(笑)
測定実験です。

麦100%ごはん、240グラム。茶碗に大盛りです。
栄養価計算サイトでみれば、押し麦の糖質は白米に対して89%です。
白ご飯240gの糖質が約88gだから、
これを押し麦ごはんに置き換えれば約78gの糖質になります。

僕の実験は、例えば麦ごはん単体で測るのではなく、
基本的には食事全体として測っていきます。
麦ごはんだけで食事を済ますことは無いので
単体実験は日常としては不自然ですし、
食事の組み合わせによっても血糖値の変動幅は変わります。
さてメニューは
・押し麦ごはん240g +梅干しの赤紫蘇
・モロヘイヤとじゃこの卵炒め
・納豆、おくら、みょうがの和え物
・豚汁(ごぼう、だいこん、人参、揚げ、豚肉、たまねぎ、しめじ)

これによりますと、豚汁1杯の糖質は5.4g。
納豆1パックはは2.3g。
豚汁なんかは中身で変わりますが、まあざっくりでいいです。
その他の素材にはたいした糖質はないですから、
全体としては86gくらいの糖質になりそうです。
しかしこの本10万部も売れてるんですね。糖質制限ブームが伺えます。
結果。

空腹時血糖値 88mg/dl(今までの血液検査の平均)
食後30分 104mg/dl
60分 100mg/dl
90分 103mg/dl
120分 116mg/dl
180分 109mg/dl
ほらほら、予想通り♪
僕の空腹時血糖値が88mg/dlだと仮定すれば、
最大でも2時間後に18mg/dlしか上昇していません。
じゃあもっと食べたらどうなるか。
そして、昔に近い粗食っぽくしたらどうなるか実験しました。

300gです。だいたい茶碗2杯分ですね。
白ごはんの場合は110gの糖質になるから、
89%だと約98gの糖質が予想されます。

・押し麦ごはん300g + 梅干しの赤紫蘇
・豚汁(一緒のやつ)
・モロヘイヤ、納豆、海苔の和え物(醤油、ラー油)
・きゅうりの塩漬け、大根の梅酢漬け、昆布かつお煮干しの佃煮(豚汁の出汁殻、味噌あじ)
総糖質量は、107gくらいと予想します。

空腹時血糖値 88mg/dl(今までの血液検査の平均)
食後30分 145mg/dl
1時間 134mg/dl
2時間 99mg/dl
食後30分をピークに140mgを超えましたが、
速やかに下降しているので特に問題ないでしょう。
なぜピークタイムと上昇率に大幅に差が出るかといえば、
脂質の量が主に関係しています。
これについては、また次回以降書きますね。

米と押し麦の栄養比較。
麦飯により脚気が予防されますが、B1自体は米より少ないのです。
押し麦に含まれる食物繊維のうち2/3は水溶性食物繊維ですが、
これは糖質の吸収をゆるやかにして高血糖を防ぎます。
そのほか糖代謝に関与するナイアシン(B3)とマグネシウム、
血管を強くするビオチンの多さも脚気予防に役立っていたのかもしれませんね。
桝本さんは麦飯の香りが嫌だったと言っていますが、
たしかに米に比べたら独特な香りはしますけど
炊きたては十分美味しいですよ!
え、そんな貧乏くさいもの食べたくないって?
それは麦飯に対する偏見というものです!┐(´~`)┌
知ってますか?
まわりの貴族階級たちがこぞって白米をがっつく中、
徳川家康と昭和天皇は生涯麦飯を主食とし
長寿で健康体だったそうですよ。
賢い者は麦飯を選択するという話です!( ̄ー ̄)
まあでも、抵抗ある人もいると思うんで、
もうちょっと現代に寄り添った実験も次回以降していきますね(笑)
ー過去記事も合わせてどうぞー
血糖値と糖質制限の基礎知識
糖質悪玉論の矛盾
測定値の読み方〜血糖値を測ります①〜
血糖値の目標上限には160mg/dlまではOKという声もあります。

(画像引用元:日常生活での血糖値測定 ~食後高血糖を抑える健康法 No.5)
個人差はあるようですが、体内の血糖値が170mg/dlを超えると尿から糖を排出するようです。
それはつまり、体がこれ以上の糖は無理です!と言っているでしょう。
僕が血液検査でお世話になっているクリニックの院長先生は
分子栄養学に理解のある糖尿病専門医ですが、
「160mg/dlくらいまでは大丈夫ですよ」という考えです。
まあ血糖値はあまり上昇しない方が良いとは思いますが、
160mg/dlまではその後速やかに下降する分にはOKではないか、と考えても良さそうです。
さて今日のお題は「麦飯」です。
日本人は米食で育ってきたと思っている人が多いですけど、
金持ち以外はそんなに米を食べていなかったのではないでしょうか?

これ、日本人が縄文から現代に至るまで何を食べてきたか検証している本です。
稲作が中国から朝鮮半島を経由して日本に伝わり、
ジャポニカ米を縄文時代から今に渡るまでずっと日本人は食べています。

(画像引用元:縄文イネの品種と起源は)
縄文時代に栽培されていたのは、インディカ米とジャポニカ米の中間的な
熱帯ジャポニカだったとも言われていますけどね。
(これが何故重要かは、インディカ米のGI値を調べてみれば分かります。)
弥生時代に水田稲作が爆発的に広がり、日本に米文化が形成されていきます。
しかし米は富の象徴であり、租税として扱われてきた面が強く、
決して庶民がたくさん食べるものではありませんでした。
「日本人が何を食べてきたか」には、
古墳〜飛鳥、奈良時代にかけて
米の他に粟、稗、麦、黍、大豆、小豆、大角豆
などが食されてきたと記述されています。
645年に日本で初の肉食禁止令が出されますが、
これは4月〜9月の期間限定、
そして牛、馬、犬、サル、鶏という5つの動物の肉にだけ限られたものでした。
これが何故かと言えば、「稲作推進のための措置」なんですね。
律令国家は経済的基盤として生産性と備蓄性にすぐれた米を選択し、
不安定な生産活動による肉を犠牲にした。
その第一歩です。
以来ずっと農民は米を作らされては、国家に取り上げられている訳です。
江戸時代、慶安の御触書にはこう書き記されています。
「百姓は雑穀による食事をふだんの事とするため、
麦、粟、稗、菜、大根などをつくってなるべく米を食べないように心がける」
むやみ勝手に米を食べてはいけないと定められていました。
米をたくさん食べていたのは、主に貴族階級や武士です。
脚気という病気がありますよね。
ビタミンB1(糖を代謝するビタミン)が欠乏する事によって起こります。
かつて結核とならぶ二大国民病として多くの死者を出しました。
戦時中、海軍では「洋食(タンパク質多め)+麦飯」を採用して脚気罹患率を激減させた歴史があります。
これに対し「日本食(副菜軽視)+白米」を選択した陸軍は脚気による大量の死亡者を出します。
ちなみに、江戸時代に脚気を発生させていたのは将軍や上層の武士達が多かったのです。
この過去を振り返ってみたら、
白米100%で食べる事がそもそもの間違いじゃないのか?
と思いませんか?

この木の枝でラーメンを美味しそうに食べるおじさんは、
先日お世話になってきた山のハム工房ゴーバルの立ち上げ人、桝本進さんです。
(ゴーバルの事はフェイスブックに投稿したので宜しければご覧ください。)
山形県出身の60代。
「ぼくは麦飯が嫌いで、おかず食いだったんだけどね…。
ていっても、食べるおかずは無かった訳だけど(笑)
ひたひたに醤油を入れた1パック分の納豆を
10人くらいで分けたりしてたんだよ。」
と言う桝本さん。
どれくらいの割合の麦飯だったんですか?と聞いてみれば、
「全部押し麦の事も多かったよね…。
麦飯の香りが本当に嫌いだったなぁ。
っていっても、米に対する憧れのせいでそう思ったのかもしれないけどね。
たまに大工みたいな仕事を親戚から承ってたんだけど、
その報酬は白い米のごはんだったよね。」
おお……江戸時代、大変な城の大工事に「コメの飯が食える」の魅力に
人が集まっていたのと一緒じゃないですか!
米は富の象徴…庶民の日常食にあらず。
おかずが無かった時代を支えてきた麦飯。
いまはおかずも食べられるんだから、きっと問題ないでしょう。
ということで前振りが相当長くなりましが(笑)
測定実験です。

麦100%ごはん、240グラム。茶碗に大盛りです。
栄養価計算サイトでみれば、押し麦の糖質は白米に対して89%です。
白ご飯240gの糖質が約88gだから、
これを押し麦ごはんに置き換えれば約78gの糖質になります。

僕の実験は、例えば麦ごはん単体で測るのではなく、
基本的には食事全体として測っていきます。
麦ごはんだけで食事を済ますことは無いので
単体実験は日常としては不自然ですし、
食事の組み合わせによっても血糖値の変動幅は変わります。
さてメニューは
・押し麦ごはん240g +梅干しの赤紫蘇
・モロヘイヤとじゃこの卵炒め
・納豆、おくら、みょうがの和え物
・豚汁(ごぼう、だいこん、人参、揚げ、豚肉、たまねぎ、しめじ)

これによりますと、豚汁1杯の糖質は5.4g。
納豆1パックはは2.3g。
豚汁なんかは中身で変わりますが、まあざっくりでいいです。
その他の素材にはたいした糖質はないですから、
全体としては86gくらいの糖質になりそうです。
しかしこの本10万部も売れてるんですね。糖質制限ブームが伺えます。
結果。

空腹時血糖値 88mg/dl(今までの血液検査の平均)
食後30分 104mg/dl
60分 100mg/dl
90分 103mg/dl
120分 116mg/dl
180分 109mg/dl
ほらほら、予想通り♪
僕の空腹時血糖値が88mg/dlだと仮定すれば、
最大でも2時間後に18mg/dlしか上昇していません。
じゃあもっと食べたらどうなるか。
そして、昔に近い粗食っぽくしたらどうなるか実験しました。

300gです。だいたい茶碗2杯分ですね。
白ごはんの場合は110gの糖質になるから、
89%だと約98gの糖質が予想されます。

・押し麦ごはん300g + 梅干しの赤紫蘇
・豚汁(一緒のやつ)
・モロヘイヤ、納豆、海苔の和え物(醤油、ラー油)
・きゅうりの塩漬け、大根の梅酢漬け、昆布かつお煮干しの佃煮(豚汁の出汁殻、味噌あじ)
総糖質量は、107gくらいと予想します。

空腹時血糖値 88mg/dl(今までの血液検査の平均)
食後30分 145mg/dl
1時間 134mg/dl
2時間 99mg/dl
食後30分をピークに140mgを超えましたが、
速やかに下降しているので特に問題ないでしょう。
なぜピークタイムと上昇率に大幅に差が出るかといえば、
脂質の量が主に関係しています。
これについては、また次回以降書きますね。

米と押し麦の栄養比較。
麦飯により脚気が予防されますが、B1自体は米より少ないのです。
押し麦に含まれる食物繊維のうち2/3は水溶性食物繊維ですが、
これは糖質の吸収をゆるやかにして高血糖を防ぎます。
そのほか糖代謝に関与するナイアシン(B3)とマグネシウム、
血管を強くするビオチンの多さも脚気予防に役立っていたのかもしれませんね。
桝本さんは麦飯の香りが嫌だったと言っていますが、
たしかに米に比べたら独特な香りはしますけど
炊きたては十分美味しいですよ!
え、そんな貧乏くさいもの食べたくないって?
それは麦飯に対する偏見というものです!┐(´~`)┌
知ってますか?
まわりの貴族階級たちがこぞって白米をがっつく中、
徳川家康と昭和天皇は生涯麦飯を主食とし
長寿で健康体だったそうですよ。
賢い者は麦飯を選択するという話です!( ̄ー ̄)
まあでも、抵抗ある人もいると思うんで、
もうちょっと現代に寄り添った実験も次回以降していきますね(笑)
ー過去記事も合わせてどうぞー
血糖値と糖質制限の基礎知識
糖質悪玉論の矛盾
測定値の読み方〜血糖値を測ります①〜
- 関連記事
-
- 麦飯第2話/穀物は選び方と食べ方で雲泥の差が出る 〜血糖値を測ります③〜
- おかずがない時代を支えた麦飯 〜血糖値を測ります②〜
- 測定値の見方 〜血糖値を測ります①〜